遺伝子の複製、修復、組み換えはあらゆる生物にみられ、生命の維持に必須な現象である。これらの過程においてそれぞれフォーク、バブル、フラップと呼ばれるDNA中間体が形成されることが知られている。XPF/Rad1/Mus81蛋白質群はこのような中間体を認識して切断する酵素で、真核生物において広く保存されているが、現在のところその立体構造及び作用機序は明らかにされていない。我々は、この蛋白質群のメカニズムを原子レベルで明らかにすべく、まず古細菌XPF/Rad1/Mus81相同蛋白質の立体構造及び機能解析を行った。 Hefはすべての古細菌においてみられるXPF/Rad1/Mus81ホモログで、複製フォークを特異的に認識して分岐点移動反応を行い、切断する。我々は超高度好熱菌Pyrococcus furiosusよりHefを調整し、ドメイン解析及びDNA切断活性を有するドメインのX線結晶構造解析を行った。Hefは一次配列上、N末端のヘリカーゼ領域とC末端のヌクレアーゼ領域から構成されているが、ドメイン解析によりヌクレアーゼ領域はさらに二つの安定なコア(ヌクレアーゼドメイン、ヘリックスヘアピンヘリックス(HhH)DNA結合ドメイン)からなることが分かった。ヌクレアーゼドメインの結晶構造解析を行ったところ、立体構造は制限酵素でみられるものと同じフォールドを有していた。この領域中のGDX_nERKX_3D配列は高度に保存されているが、機能的には制限酵素におけるPDX_n(E/D)XK配列に相当し、活性中心を構成することが変異体解析より明らかになった。また、XPF/Rad1/Mus81蛋白質群はすべて二量体を形成することが知られているが、結晶構造及び変異体解析より二量体の接触面はヌクレアーゼドメインとHhH DNA結合ドメインの二ヶ所に存在することが分かった。これら二ヶ所の接触面を同時に破壊した場合にのみ単量体となり、なおかつこの単量体はDNA切断活性が非常に低下していた。これらの解析からHefを含むXPF/Rad1/Mus81蛋白質群における共通の分子機構が明らかになった。
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