研究概要 |
本年度は,NK4による血管新生阻害作用に関与する内皮細胞のNK4結合分子を同定した。方法としては、リコンビナントNK4を固相化したビーズを用いる生化学的な手法を試みた。具体的には、細胞膜表面をビオチン化した内皮細胞の抽出物を調製し、NK4ビーズと反応させてpull down assayを行った。その結果、ビオチン化された分子量38kDの分子(p38)が再現性良くNK4ビーズに結合し、0.5M NaClで溶出された。一方で、線維芽細胞の抽出物を用いた場合には、ビオチン化p38は全く認められなかった。したがって、p38はNK4とイオン結合を介して結合していて、さらにその結合は内皮細胞特異的であることがわかった。 そこで、p38蛋白のアミノ酸配列を決定するために、内皮細胞の抽出物を大量に準備し、大量にp38を調製した。調製したp38をSDS-PAGEで分離し、p38のバンドを切り出し、LC-MS/MS分析を行ったところ、p38は主に核内に存在する既知のリン酸化蛋白であることがわかった。しかしながら、p38に対する特異的抗体を用いて行った解析の結果、p38はビオチン化されていて、かつ内皮細胞特異的にNK4に結合することが確認された。したがって、p38がNK4の血管新生阻害活性に関与している可能性が強く示唆された。
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