研究概要 |
昨年度までの研究で,穴あきトーラスの擬フックス空間とその境界に含まれる群(穴あきトーラス群)のフォード基本領域の組み合わせ構造の記述が得られている.今年度,5月6日から6月28日までイギリスのWarwick大学にし,同大学のSeries氏らと議論をしたことにより,組み合わせ構造の記述のために用いた不変量が,穴あきトーラス群による3次元双曲空間の商空間として得られる双曲多様体の無限遠境界に現れるリーマン面の等角構造を用いて定義される,よく知られた不変量と関係を持つことを証明することができた.その応用として,境界群における組み合わせ構造の実現可能性が導かれる.また,逆に,等角不変量から多様体の構造をより具体的に知ることも可能となった. 同様の考察を一般の種数の曲面群へと拡張するために,3次元球面内のファイバー結び目のある無限族を考察した.この族は,A'Campo氏によるある種のファイバー結び目の記述の中で最も基本的な族とされていると同時に,ファイバーとして現れる曲面の種数が発散する族でもある.その標準的分割の記述には,昨年度得られた標準的分割のデーン手術理論が適用でき,すでに組み合わせ構造の記述は得られている.今年度は,標準的分割とファイバー構造との関連を考察した.その結果,円周上の穴あきトーラス束の標準的分割の組み合わせ構造の記述から,最初に期待される「ファイバー曲面は標準的分割の2次元骨格にアイソトピックであろう」という性質は満たされないことが判明した.標準的分割とファイバー構造との関連の解明は来年度の課題である.
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