研究概要 |
ヒトセントロメア領域由来の約70kbのアルフォイドDNA断片をYACもしくはBACへクローン化し、ヒト培養細胞へ導入すると、宿主染色体とは独立して分配維持されるヒト人工染色体が形成される。ヒト人工染色体は導入YAC(BAC)が細胞内で増幅連結して形成されており、この人工染色体上のアルフォイド配列にセントロメア構造が新規に形成される。ところが、この前駆体YAC(BAC)へ強いプロモーター(CMV, PGK)とマーカー遺伝子を挿入すると人工染色体形成が阻害された。そこで、挿入遺伝子領域とセントロメア領域のクロマチン構造を人工染色体上で分離させる目的でヒト細胞でも機能が確認されているニワトリのβグロビン遺伝子境界領域(インスレーター)を挿入したが、インスレーター配列の有無にかかわらず人工染色体は全く形成されなかった。この阻害効果の原因を探るためにマーカー遺伝子からプロモーター部のみを除いたところ、人工染色体形成活性が回復した。遺伝子からの転写が効率よく起こるクロマチン構造とセントロメアやヘテロクロマチンを構成するクロマチン構造の根本的な違いが阻害効果となって現れている可能性が考えられた。現在、ChIP法やindirect immuno-FISH法を用いて、セントロメア構造やヘテロクロマチン構造に対するプロモーターの影響を解析している。さらに強いプロモーターとマーカー遺伝子を組み込んだ前駆体BACの混合比を低くして人工染色体形成能の高い前駆体BACと混ぜて細胞へ導入することにより、人工染色体上での強いプロモーターの存在比を低下させてやると、強いプロモーターにつないだ遺伝子からの転写も起こる人工染色体が構築可能であることが判明した。
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