本研究は既存にはない新規の炭素材料を作製し、その特性を明らかにすることを目的としている。本年度は前年度から引き続き、主に人工オパールを鋳型として作製した多孔性炭素材料について研究を行った。また高分子フィルムから作製した黒鉛フィルムが示す新規的な特性についても研究を行った。本年度の研究により得られた知見および業績をまとめると次のようになる。 まず、作製した多孔性炭素材料中に、触媒となる金属の微粒子を担持させる事に成功した。人工オパールを鋳型とした多孔性炭素材料は、孔と孔が互いに連結した特異な網目構造を有しているために、触媒担持電極として優れた特性を示すことが期待できる。 また作製した多孔性炭素材料を2800℃という高温で焼成することにより、黒鉛構造が孔を取り囲むようにして成長することを見出した。これらの試料は孔径に依存して、結晶構造の成長度合いが変化することを見出した。 更に孔径の異なる焼成多孔性炭素材料が、結晶度の違いに起因して異なる電子物性を示すことを明らかにした。具体的には孔径の小さい試料ほど、低温における抵抗率の増加が顕著になることを見出した。また、磁場を印加することで抵抗率が減少する負の磁気抵抗を示すことを見出し、これらが電子の弱局在効果によるものであることを見出した。孔径が約20〜40nmと小さい試料では室温においても負の磁気抵抗を示すことを見出した。 これらの知見に加え、本研究では高分子フィルムを焼成して作製した高性能な黒鉛フィルムが可逆的に屈曲可能であることに着目し研究を行い、屈曲に伴う特性の変化を明らかにした。 また得られた知見を第30回炭素材料学会年会にて発表した。
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