本研究では、通常、非常に不活性で切断することが困難とされており、ほとんど報告例のない飽和炭素-水素結合(sp^3炭素-水素結合)の切断を含む新規触媒反応、特にアルキル化反応とカルボニル化反応の検討を行なってきた。平成14年度は、アルキル化反応とカルボニル化反応の反応機構の解明を目指すとともに、他の形式の反応の検討も行なった。 (1)アルキル化反応とカルボニル化反応の反応機構解明に関する検討 いずれの反応に関しても、溶媒に重溶媒2-プロパノール-d_8を用いて、重水素化実験を行ったところ、反応機構に関する知見がいくつか得られた。1つは、炭素水素結合の切断は律速段階ではないということ、さらに、炭素-水素結合の切断は、実際に炭素-炭素結合が形成される以外の炭素水素結合でも起こっているということが明らかとなった。 (2)他の形式の反応の検討 種々検討の結果、これまでのアルキル化反応とカルボニル化反応とは反応形式の異なる、炭素-水素結合のアリール化反応を見出した。具体的には、脂肪族アミンとアリールボロン酸をルテニウム触媒存在下反応させると、アリール基が導入されることが明らかとなった。
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