研究概要 |
本研究の目的はEGF受容体における情報伝達メカニズムを解明することである。 (1)EGF受容体は下流に情報伝達回路を複数もつ情報の分岐点である。EGF受容体1分子はこの分岐をどのように制御しているのか。(2)EGF受容体はCblによってユビキチン化を受けて情報伝達を抑制される。この抑制過程と他の情報伝達回路との関わりはどうなっているのか。(3)EGF受容体はエネルギーとしてATPを必要とする。情報の伝達とエネルギーの関係はどうなっているのか。 以上のことを1分子可視化技術によって明らかにする。それによって細胞内情報伝達メカニズムや、分子ネットワークのダイナミックスの解明が期待できる。 セミインタクト細胞を用いての細胞内1分子観察系を確立する。同時多色観察が可能な実験系をつくる。 具体的な研究実施計画は以下の通りである。 1.蛍光ラベルした受容体結合タンパク質を、活性のある状態で精製する方法を確立する。 2.EGF受容体とそれら受容体結合タンパク質の結合・解離の1分子実時間計測を行う。 3.顕微鏡をつくる。同時多色観察を可能にするために、顕微鏡の改造に着手する。 セミインタクト細胞を用いての1分子観察系の確立と、その系でのEGF受容体とGrb2,Shcなどのアダプター分子のSH2ドメインとの相互作用を1分子実時間計測することが本年度の研究目標であった。しかし結果的には、実験系の確立は未だ途上段階にある。 現時点で着手しているものは、以下の通りである。 ・同時多色一分子観察可能な顕微鏡の設計・作製 実験系の確立に向けて現時点で解決されていない問題がまだ幾つかあるが、本年度の目標の大部分は達成できたと考えられる。今後もこの方向で研究を進めていく予定である。
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