His-Aspリン酸リレー情報伝達機構はセンサーキナーゼ、HPt因子、レスポンスレギュレーターの3因子からなりそれぞれに保存されたHis残基とAsp残基間のリン酸リレーによって情報伝達が行われている。これまでに高等植物において植物ホルモン応答に関与していることが示されその重要性が注目されている。シロイヌナズナでは全ゲノムが決定されこの機構を構成するセンサーキナーゼが11種類、Hpt因子が5種類、レスポンスレギュレーター(ARR)が22種類存在する事が明らかとなった。ARRはその構造およびホルモン応答の特徴から10種類のタイプA、11種類のタイプBに大別できる。私はシロイヌナズナにおけるHts-Aspリン酸リレー系に関してレスポンスレギュレーターを中心に解析を行っている。現在までに11種類のタイプB ARRのプロモーターGUS植物体を構築し発現部位の網羅的解析、および機能領域の過剰発現植物体を用いた機能解析を行い11種類のARRの特徴付けを行おうと試みている。それらの表現型とレシーバー領域をもとに解析した系統樹からさらに3つのサブグループに分類できると推測している。今後さらに各タイプB ARRのT-DNA挿入型遺伝子破壊植物体の網羅的スクリーニングを行いその表現型の解析と植物ホルモン応答を検討しさらに特徴付けたいと考えている。またこれまでに解析の進んでいるARR11に関してはマーカー遺伝子をもつ形質転換植物体を用いてその下流のターゲットとなる因子との相互作用をみるためさらにARR11機能領域過剰発現系を導入した植物体を構築している。この解析から植物体器官形成メカニズムにおけるARRの作用機作に新たな提唱ができると考えている。
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