RNAiとは、生物に2本鎖RNA (dsRNA)を投与した場合に相同な配列を持つmRNAの分解が生じる現象であり、基礎研究のための遺伝子発現抑制の新しい手法としてのみならず将来の医療分野への応用も期待されている。RNAi現象の分子機序の実体を解明するために、筆者はモデル生物として線虫C. elegansを用いて研究を行ってきている。 筆者はこれまでに、dsRNAの導入に伴うRNAi反応に関与する因子を幾つか同定してきており、その因子の1つであるrde-1に着目して本年度の研究を行った。まずRDE-1のN末領域に対応するリコンビナント蛋白を作製し、ラットとウサギに対して免疫して抗体を作製した。次に、精製した抗RDE-1抗体を用いた免疫沈降実験によって、RDE-1がin vivoで相互作用している蛋白の候補を4種得た。質量分析による解析の結果、相互作用を示す蛋白の1つであるp40がII番染色体上の遺伝子に由来することがわかった。 又、筆者は、RNAi反応に関与する因子を同定するためにRNAi活性を欠損した変異体rdeを単離してきた。これまでのスクリーニングにおいてはrde-1遺伝子に対する変異が多く出現し、その他のRNAi関与遺伝子に対する変異が得られる確率が低いことが問題点であった。そこで、新しいタイプのrde変異体を効率良く単離するために、rde-1遺伝子を多コピー導入したトランスジェニック線虫を作製することにより、rde-1変異体を避けて遺伝学的スクリーニングを行うシステムを開発した。
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