研究概要 |
映像に人が関わる現象全般を対象として,理解および生成・創造の認知モデル・計算的モデルの構成を方法論に,映像の認知科学的研究を様々な観点から推進した.具体的には,以下の三つについて研究を行った. 第一に,既成の映像の修辞(映像の送り手のある目的に基づく映像技法の組み合わせ)自体の分析によって,映像分析の枠組みを作成し,この枠組みを用いて,同一広告カテゴリーの複数ブランドを複数年分析し,その修辞の変遷過程を考察した.また,音楽ビデオ・映画・ビデオアート作品についても修辞の分析を行った.特に,ショット間の共通性と差異に注目した分析を行った. 第二に,上記の結果をふまえ,コンピュータによる映像の修辞の生成システムを次年度の完成に向け,考察・作成中である.これは,連続するショット間の要素に共通性を持たせるか否かに基づき,自動生成を行うシステムである.物語内容の表象を目的とする場合としない場合の両者に対応可能な仕組みを現在構築中.また,試作システムによって,一部,映像を生成した. 第三に,考察・生成した映像の修辞を題材に心理学的実験を複数行い,そこで得られたデータに基づき,映像の修辞の効果に関する分析をし,映像認知プロセスの詳細を明らかにした.特には,映像の修辞における連続するショット間の共通性と差異の設定の変化によって,感情・情緒および感動,映像に触発された受け手による積極的・自発的なイメージの形成などの効果にどのような差が生じるかを考察した.
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