チャンドラ衛星によって取得した重力レンズ銀河団CL0024+17の観測データの解析を行い、銀河団ガスの温度分布および空間分布を詳細に調べた。これより、まず第一に温度分布に有意な半径依存性はなくガスは等温とみなせることが分かった。さらに空間分布の二次元フィットにより、X線表面輝度分布は、コア半径の大きな銀河団放射とコア半径のより小さな成分の重ね合わせでよく説明できることが分かった。以上の結果にもとづいて、静水圧平衡の仮定のもと銀河団の質量推定を行い、これを一方の重力レンズ効果の観測から求められる質量と比較した。その結果、様々な系統誤差を考慮しても、X線から求まる質量は重力レンズ質量の約1/2から1/3にしかならないことが分かった。この理由の一つとして、X線データから新たに発見した銀河団中の小さなコアの成分が重力レンズモデルには取り込まれていないため重力レンズ質量推定の不定性が大きいという可能性を指摘した。 また、XMM-ニュートン衛星で取得した高赤方偏移の銀河団3C324の観測データの解析も行った。その結果、この領域からのX線は3C324電波銀河自身の放射が優勢であり、銀河団ガス自身の放射は顕著でないことがわかった。このことは、高赤方偏移の銀河団のガスの性質が近傍銀河団と比較して、ガス温度や密度の点で異なることを示唆するため、銀河団ガスの進化の理解にとって非常に重要である。今後3C324銀河団についてより詳細な研究を行うと同時に、他の高赤方偏移の銀河団についても解析を進める予定である。
|