1.改良された平均場近似とIIB行列模型の自発的対称性の破れ 平均場近似を改良して、改善された摂動展開を系統的に与える方法を考察した。これは、通常の摂動展開から容易に構成できるにも関わらず、通常の摂動論が破綻している理論にも適用できるのが大きな特徴である。これをIIB行列模型に適用した結果、もとのSO(10)対称性が自発的に破れ、固有値分布が10次元的でなく、4次元的に広がっている証拠を得た。これは、我々の時空が4次元であることの証明を与えている可能性がある。この解析には、高次のダイアグラムの計算が必要になる。我々は2PIダイアグラムという非常に少ないダイアグラムの和からLegendre変換によってすべてのダイアグラムの和が再現できることを指摘した。この事実は他の理論にも適用でき、汎用性が期待される。 2.Dijkgraaf-Vafa(DV)理論の拡張とそれを含む新しい行列模型 最近N=1 4次元超対称ゲージ理論の低エネルギーは、0次元の1-行列模型で導出できることが指摘された(DV理論)。この事実は、ゲージ理論のlarge-N極限は0次元の行列模型と等価であるという事実(Eguchi-Kawai reduction)を思い出させる。このことを動機に、両者の関係を詳しく調べた。まずもとの4次元超対称ゲージ理論を非可換時空上で定義することにより、この理論は行列模型と等価であることを示した。我々の構成した行列模型は、超対称性とゲージ対称性が統一されているという著しい性質を持ち、基礎理論としての役割が期待される。さらに、フェルミオン的な座標も非可換することにより、理論は1-超行列模型に帰着されることを示した。この行列模型ともとの4次元のゲージ理論の相関関数は構成から等しいことが示され、我々の1-超行列模型がDV理論の予言する1-行列模型に他ならないことを示した。
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