補体C3a(77残基)とC5a(74残基)は補体系活性化に伴って派生するポリペプチドで、肥満細胞に作用して炎症を誘発するなど、免疫系で重要な役割を演じている。これまで我々はC3aとC5aがともに抗オピオイド作用や学習促進等の中枢作用を示すことを報告してきた。さらに、摂食調節に関して、C3aは摂食抑制を、C5aは逆に摂食促進作用を示すという興味深い現象を見出した。C3aとC5aのメディエーターとしてヒスタミン、アセチルコリンおよびプロスタグランジン(PG)が知られているが、これらのうちPGは分子種により逆の中枢作用(e.g. PGE_2は覚醒、PGD_2は睡眠)を示す場合がある。そこでC5aとC3aが反対の摂食調節作用を示すのはPG分子種の差によるものではないかと考え、検証した。まず、PGそのものの摂食調節作用を検討したところ、PGE_2が摂食抑制作用を有するのとは逆に、PGD_2が摂食促進作用を示すことを初めて見出した。さらに、C5aの摂食促進はPGD_2レセプターのアンタゴニストやアンチセンスODNの投与により阻害され、C5aの摂食促進作用はPGD2を介することを明らかにした。他の摂食調節ペプチドとPG系の相互作用について現在検討中である。 1999年に単離された摂食促進ペプチドのグレリン(28残基)はGHS(成長ホルモン分泌促進因子)レセプターの内因性リガンドである。本研究では、経口で有効なグレリンのペプチド性低分子リガンドの開発を目指し、GHSレセプターに親和性を示すペプチドを検討した。グレリンのN末端のアミノ酸配列を参考に4-5残基のペプチドを合成し、GHSレセプターアッセイを行ったところ、1O^<-5>M程度の親和性を示すペプチドを得た。現在、より高い親和性を示すペプチドを設計するとともに摂食調節作用や成長ホルモン分泌作用について検討中である。
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