これまでに、μ-オピオイド受容体に対し高選択性かつ高親和性を有するcarfentanilを親化合物として、構造-活性相関に関する考察をもとにその構造を様々に改変させた化合物を設計・合成し、クローン化オピオイド受容体発現細胞株を用いて受容体結合特性の評価を行うことで、μ-オピオイド受容体に対して高選択性を有し、且つ様々な親和性を有するリガンド賦活法に適したPETリガンド候補化合物を数種見いだしてきた。本年度は、これらのうち最もμ-オピオイド受容体選択性の高い化合物の薬理作用を個体レベルで検討するために、30mgの追加合成を行い、手始めとして鎮痛作用に関して、モルヒネとの比較検討を開始した。 また、μ-オピオイド受容体のより詳細な個体レベルでの機能解析を行うために、μ-オピオイド受容体を特定の神経系にのみ発現する遺伝子改変マウスの作製を試みている。本年度は、ノルアドレナリン神経特異的な発現調節を行うプロモーター遺伝子の下流にμ-オピオイド受容体遺伝子を組み込んだ遺伝子を作製し、これをマウス受精卵に対しマイクロインジェクションを行うことにより、4系統のトランスジェニックマウスを得た。これらトランスジェニックマウスをμ-オピオイド受容体ノックアウトマウスとかけ合わせることにより目的とするマウスを得ることができると考えられる。すでに、トランスジェニックマウスとノックアウトマウスのかけあわせにより1系統のマウスを得ており、現在、受容体遺伝子発現と機能的タンパク質発現に関して、インジツハイブリダイゼーション法および受容体結合実験により解析中である。
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