研究概要 |
本研究は、人の移動が活発なことで知られるフィリピン中部サマール島の農村部からマニラ首都圏へ移住した人々のコミュニティ形成と変容過程について、生活史を中心に実証考察し、人の移動の民族誌としてまとめることである。前年度までに行った島の母村を中心とした参与観察や生活史の聞き取りに加え、平成15年度は、フィリピン大学第三世界研究所での研究指導を受けながら、マニラ側の移住者コミュニティにおいて、過去半世紀にわたるコミュニティの形成過程と移住者のライフコースに関する聞き取りを行った。また、帰省者が集中する村祭りの時期には、コミュニティの人々とともにマニラから母村まで往復するかたちでの参与観察や、移住の民族誌を記述する際に必要な村人の系譜調査も実施した。さらに今年度後半には、聞き取った生活史の会話の文字化や翻訳作業を進めたほか、平成15年12月にフィリピン大学で開催された第三世界研究ワークショップにおいて、今年度の研究成果の一部をもとにした「Can Cities Become New Frontiers for Migrants? : A View from a Samar Village, Philippines」と題する発表を行った。 その発表ならびに昨年度公表した論文に対する批評を参考にしながら、現在、第二次世界大戦後のフィリピンにおける移動・ジェンダー・ネットワーク形成に関する日本語論文と、Sapalaran(新たな運命を開くという意、移動の際によく用いられる語)をキーワードとしたフィリピンの移動文化と生活戦略をテーマとした英語論文の計2本の投稿論文を準備している。
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