1 PAZ17破壊株におけるミクロペキソファジー進行の遅延 メタノール資化性酵母Pichia pastorisにおいて、過剰のペルオキシソームはオートファジーによって液胞で分解される。液胞によるペルオキシソームの分解過程は特にペキソファジーと呼ばれ、その膜動態の違いによりミクロあるいはマクロペキソファジーの二つの過程が知られている。申請者は前年度までにペキソファジーに関わる新規遺伝子を単離し、PAZ17と名付けた。今年度、PAZ17破壊株について、液胞とペルオキシソームをそれぞれ蛍光色素FM4-64、GFP-PTS1 (Peroxisome Targeting Signal 1)で蛍光標識して形態観察を行った結果、PAZ17破壊株においてはミクロペソファジーの進行が遅延することが明らかとなった。また、PAZ17破壊株においてマクロペキソファジーの進行には影響がなかった。 2 Paz17のNBF1変異体の作成 Paz17の属するABCタンパク質ファミリーは特徴的なドメインNBF(Nucleotide Binding Fold)をもつ。申請者は今年度、Paz17の二つのNBFのうち、NBF1のリジンをメチオニンに変えた変異体を作成した。NBF1変異体について形態観察を行った結果、ペキソファジーの進行に影響はなかった。 3 Paz17のvanadate-induced nucleotide trappingの検討 申請者は前年度までに、光親和標識実験vanadate induced nucleotide trapping法によって、Paz17のヒトホモログMRP1のATPase活性を詳細に検討してきた。今年度、Paz17について同様の検討を行ったが、Paz17においてはvanadate induced nucleotide trappingは検出されなかった。
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