本年度は昨年度に引き続いて、MD(分子動力学法)により原子レベルのシミュレーションを行い、研究題目にあるようにプラズマ表面相互作用の理解を目的とした研究を遂行した。 本研究の重要な部分であるSi-O-C-F系の原子間ポテンシャルについては、第1号モデルを昨年度に開発したので、本年度はそのモデルを用いて酸化シリコンのCFxビームによるエッチングシュミレーションを行った。従来のポテンシャルモデルとは発想が異なる部分も含まれるので慎重なチェックを必要としている。本年度の前半までに実験的研究で扱われているパラメータ領域においてデータを集め、それらをまとめて学会発表を行った。その後、実験研究者と議論をすることで得られた計算結果の妥当性を検証した。該当する実験(酸化物エッチングが進む条件下)と比較する限りではモデルは有効であるとの結論を得ている。また、本研究は産学提携研究として行われているSTARCのプロジェクト(研究代表者:浜口智志助教授)とも連携して研究を進めており、本研究で用いられた計算コードは一部産業界でも試験的に使用されている。 CFxビームと酸化膜の相互作用では、エッチングと堆積の2つの条件があるのだが、堆積するという現象を再現するにあたっては、現在のモデルでは不十分という結論を得ている。その点に関して、今までは無視してきた弱い分子間力が重要ではないかという仮説のもとにそれを検証すべく研究を続けている。この堆積メカニズムの解明を行うことが来年度の課題になる予定である。 また、原子間ポテンシャルは数値計算をする際のことも考えて関数形の簡便さも重要であるので、その点に関する改良もつづけている。
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