平成13年、14年度の二酸化炭素のポテンシャル曲線の計算では、分子が対称伸縮についての計算を行った。今年度は、さらに核間距離を変えた量子欠損の計算を行い、核間距離と主量子数に対する変化の様子を調べることができた。今後は非断熱遷移との関係を調べたいと考えている。また、変角や非対称伸縮の形に対応する分子構造の計算をできるようにするために、プログラムの改良を行った。R matrix/MQDT法の基本的な構成は、電子状態計算によりR行列を求める部分と、散乱計算から得られる位相差からポテンシャル曲線を決定する部分からなっている。今まで用いていたプログラムをそのまま使って、実際に二酸化炭素の変角の計算を行ってみたところ、計算できる分子の構造に対する制限が多いことがわかった。そこで、ロンドン大学のテニスンらにより開発されたプログラムの代わりに、分子科学研究所の小杉教授により開発されたプロゲラムGSCF3を電子状態計算の部分に用いて、R行列を計算できるように改良した。その結果、変角を含む計算に対する制限を減らすことができた。二酸化炭素のポテンシャル曲線の計算では、非対称伸縮の場合の計算を行った。更に、実験でえられるスペクトルと計算結果を直接比較できるようにするため、散乱断面積を求めるようにR matrix/MQDT法の改良を行った。二原子分子を用いたテスト計算の結果、吸収スペクトルをさらに詳しく解析できるようになった。レーザー場中の分子の性質を調べるための研究については、レーザー場中の電子の運動を調べることができる時間発展ハートリーフォック法を用いたプログラムの開発を行った。今後は多電子系に適用できるようにし、分子のレーザー場中の電子波束の運動を調べていきたい。2003年11月12日から12月4日までイギリスのオックスフォード大学において研究に従事した。
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