マウス脳の神経細胞において高発現している新規高分子量GTP結合タンパク質(mOPA1)は、N末端にミトコンドリア輸送シグナルを有し、COS-7細胞に遺伝子導入するとミトコンドリアに局在し、ミトコンドリア断片化を引き起こすことをこれまでに明らかにしてきた。近年、ヒトにおける相同遺伝子が、遺伝性1型視神経萎縮症の原因遺伝子であることが同定された。複数の家系調査により、遺伝病の原因となる多くの変異が、異なった部位に導入されていることが発見されてきた。今年度の本研究においては、疾患の原因となるアミノ酸点変異を導入したマウスクローンの変異体を作製し、培養細胞に発現させたときのミトコンドリア形態に与える影響について検討した。 mOPA1のアミノ酸配列において、疾患変異に相当する部位のアミノ酸はヒトと同一であったので、マウスクローンにおいて相当する点変異体を16種類作製し、COS-7細胞に遺伝子導入した。その結果、すべての変異体はミトコンドリアに局在することが観察された。しかしミトコンドリア形態に与える影響は変異体間で違いが見られ、16種類の疾患変異体の表現型は以下の4グループに分けられた。(1)グアニン塩基への結合能を失った変異体と類似のもの、(2)GTPase活性を失った変異体と類似のもの、(3)C末端欠失変異体と類似のもの、(4)野生型mOPA1と類似のもの。 培養細胞に発現させたときに観察されるミトコンドリア断片化能が、作製した疾患変異体のほとんどと異なったという今回の結果から、OPA1のミトコンドリア形態に与える機能の変化が、遺伝性視神経萎縮の一部となっていることが推察される。
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