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2003 年度 実績報告書

神道思想史におけるイザナミ神の出産と死穢についての倫理学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 01J04885
研究機関東京大学

研究代表者

吉田 真樹  東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)

キーワードイザナミ / 死 / 神 / 光源氏 / 感情 / 心細し
研究概要

研究最終年度である本年度は、(1)神道思想史・日本思想史全体におけるイザナミ神話の位置づけを確定し、(2)新たな「死」「生」の概念を総合的に導出する、という予定であったが、結果として(1)の途中まで研究を行ったことになる。また、兵庫県津名郡一宮町多賀の伊弉諾神宮の現地調査を行った。まず、前年度に発見された、神話における「感情」と一体のものとしての「死」の論という新たな課題を考察するのに、最も適しているのが『古事記』と『源氏物語』であることを見定めた。その上で『源氏物語』における「感情」と「死」について光源氏を中心に考察し、次のことを朋らかにした。光源氏は他者の「死」にとり囲まれており、光源氏の「感情」の深さは「死」に対する直観に基づいている。光源氏の「感情」と光源氏に先立って「死ぬ」他者の「感情」とに共通しているのが、「心細し」という「感情」である。したがって、光源氏は最後まで生き残る者ではあるがその「生」には「死」が浸潤していることになる。「生」のうちに浸透する「死」の概念は、「生」と「死」が一つに溶け合っている世界、「死」が他者の「死」という形で生者のうちに食い込んできている世界を指し示している。「生」と「死」の隔絶を見ない世界観においては、生から死へ・死から生への連鎖・因縁が常に意識されてくることになる。これは『源氏物語』が仏教的な世界観を独自に日本的に解釈し直し、「生」と「死」の物語として具体化させたということを意味している。以上との対比から、『古事記』は死生観において意図的に仏教を排除しているということが改めて発見された。イザナミは「生む」ことにおいて、自動的身体との乖離としての「感情」を獲得する素地を得、「死ぬ」ことにおいて身体から完全に分離した「感情」を獲得した。したがって、「死」は身体の喪失と「感情」の獲得を面すものであるということが発見されたといえる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (2件)

  • [文献書誌] 吉田 真樹: "光源氏はなぜ光るか"本. 28・9. 44-47 (2003)

  • [文献書誌] 吉田 真樹: "光源氏の存在の基底について"思想史研究. 4. 1-35 (2004)

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公開日: 2005-04-18   更新日: 2016-04-21  

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