今年度も昨年に引き続き、自然環境(及びそれに関連する要素)がどのような形で都市生活の中に取り入れられていったのかについて、特に都市の生活様式と密接に関わる領域において研究することを目指した。研究は以下二つのテーマを扱った。 1)室内の緑化の展開からの都市生活と緑の関わり方についての考察 ドイツの都市室内の自然環境の歴史的変遷を観察し、それについての分析から、都市の自然環境がもつ文化的な特徴全般について考察を加えた。この論考は6月末にイギリス・レスターで開催された第二回ヨーロッパ環境史ワークショップにおいて発表した。 2)対外的文化・社会交流とドイツの都市の自然愛好文化 これまで都市の自然環境の在り方については、都市あるいはドイツ国内内部の社会的・文化的文脈から論じられるだけであったが、グローバルな文化・社会的交流は部分的に近代ドイツの自然環境の形成に直接・間接的に決定的な影響を与えていた。このため都市の自然環境の認識および配置のされ方とドイツの対外的な文化・社会的交流との関連についての研究を進めた。 また今年度は、これまでの環境文化史研究の成果・内容を歴史関連の研究会において発表するだけではなく、日本国内の環境学全般に関する研究会や学会においても発表することを積極的に行った。これによって学際的研究交流が始まり、違う研究分野の研究者から刺激的意見を得、自分の研究内容やその意義について見直すことができたことは大きな収穫であった。またこのような学際的な研究交流は、これまで国内で歴史学からの環境史研究が環境学研究会において発表されたことがほとんどなかったため、環境歴史学研究の存在を関連研究者に知らしめるという点でも意味が大きかったと考える。
|