史料調査としては、第一に、平成14年10月9日より22日の間、北京第一歴史档案館においてタイ-清朝関係に関する軍機処档案類を閲覧した。その結果、実録等の公刊文書に記載されていない内容を含む档案が見出された。 第二に、4月3日より7月1日、11月28日より平成15年2月25日の計約半年間にわたって、昨年度に引き続き、バンコクのタイ国立図書館古文書室においてラタナューシン朝初期(c1782-1856)の未公刊文書のうち、主として対清関係、タイ国内の華人層の社会的活動に関する史料を閲覧した。また、バンコクにおける華人グループの集住地域における、仏教寺院を中心とした歴史的建築物に関する調査を行った。集住地域と結びつきを持つ建寺の由来、中国の影響を受けた建築・美術様式、華人の社会的活動を描いた壁画の題材等が検討対象である。これらの建築、美術は文字史料に現れないトンブリー朝、初期ラタナコーシン朝を中心とする華人グループの影響力を検討する題材となる。 来年度においては、タイ国立図書館所蔵のタイ語未公刊史料および、第一歴史档案館のタイ-清朝関係档案のうち未読部分を、台湾故宮博物院図書文献館の档案とも比較しつつ閲覧してゆくことを予定している。また、タイにおける華人グループに関する史跡についてバンコクにとどまらず、タイ国内の他地域、特に対清ジャンク交易を中心とした華人グループの活動に深い関わりを持つ、南部、東海岸部においても行ない、研究対象期のタイ清関係に関し、特に政治的・文化的側面について検討していきたい。
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