動的な閉じ込め効果が重要な系として、フラーレン内に水素分子とBe原子が内包されている系の理論計算を行った。特に、C_<60>内でのBe原子の動的な振る舞いを調べるため、有効電荷の時間変化を半経験的QM/MM分子動力学法により解析し、温度と有効電荷や内部運動の関係を明らかにした。内包水素分子数がn=2の場合には全ての温度領域において電荷揺らぎが非常に大きく、さらに温度を変化させることによって、その分布が著しく変化することを数値的に明らかにした。また、低温100Kに比べて高温200〜300Kでは、電荷分布のピーク位置が負の方へ大きくシフトしている。この2つの差異を調べるためトラジェクトリーを解析すると、大きな電荷揺らぎの原因はBeとC_<60>の中心方向を結ぶ運動に起因し、温度変化によるピーク位置の負の方向へのシフトは隣の6員環への遷移によるものであることが判明した。 マロンアルデヒドは分子内水素結合を有する非常に有名な分子である。この分子はまた光吸収によって、3つの結合に関してcis-trans異性化反応を起こす。とくに、希ガスマトリックス中において、マロンアルデヒドに紫外線を照射すると、4つの異性体へと特異的に異性化することが知られている。この異性化反応生成物の収量は不活性の希ガスの種類に大きく依存し、溶媒効果の効く系であるといえる。そこで、凝縮相中での反応前段階の吸収波長を調べるためにQM/MM法を用いた励起状態計算法を開発した。8種類の異性体に対して孤立分子、無極性の四塩化炭素中での基底状態の構造、励起エネルギーを評価した。無極性溶媒中では構造変化、並びに励起エネルギーがほとんど変化しないことから、この反応収率の変化は励起後の動的な過程によって記述されることが推察される。現在、励起状態ダイナミクスのプログラムを作成中である。
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