研究概要 |
1.これまでコハクカノコと呼ばれていた貝類が隠蔽種2新種を含む3種からなること、またそれらはインド太平洋に広く重複分布することを明らかにした。これら同所的に分布する3種は、河川の上流から下流までの、河口からの距離、流速などの点で異なる環境に棲み分けている。これらは同所的に種分化した可能性がある(J. Moll. Std. 69,in press)。 2.鹿児島県および沖縄県の砂礫浜間隙の伏流水中からコハクカノコ属の新種を発見、記載した。本種の発見は、河川明所に生息するコハクカノコ類と海底洞窟のシラタマアマガイを生態的に連続させる点で重要である(J. Mar. Biol. Ass. UK82,in press)。 3.アマオブネ上目(コハクカノコ科およびその近縁の科)について28S rRNA塩基配列による系統解析を行い、化石記録・解剖学的情報とあわせ、同上目における適応放散について考察した。同上目における3回の完全陸上進出、海底洞窟や類似の間隙環境への2回の進出などを推定した(Proc. R. Soc. Lond. B,269:2457-2465)。 4.詳細な解剖・組織学的検討により、コハクカノコ属とシラタマアマガイ属が19派生形質を共有する独立の科レベル分類群であることを示した。同科の全ての種の眼は水晶体と角膜を欠き、網膜が露出している。過去に一度は複雑化した眼が、地下で退化した可能性が高い。(J. Moll. Std. 68:356-384)。 5.フィリピンのanchialine caves(地下で海と連絡する沿岸の汽水環境)からコハクカノコ属の真洞窟性新種を発見、記載した。mtDNA配列を用い個体群解析を行った結果、200km離れた洞窟間の頻繁な移動が示唆された。浮遊幼生の拡散能力と生理的耐性の高さが、洞窟間の移動を容易にしている(Zool. Scr. submitted)。
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