特別研究員はまず腫瘍抗原特異的細胞傷害性T細胞モデルを作製した。用いた腫瘍細胞はマウス線維肉種p815にマウスアロ抗原H-2Kbを発現させたp815 Kbである。H-2Kb特異的T細胞レセプター(TCR) aKbのα鎖及びβ鎖をレトロウイルスベクターを用いてDBA2マウスCD8陽性細胞に感染させた。発現の確認出来るb鎖はCD8陽性細胞の50%で発現を認めた。aKb TCR感染CD8陽性細胞はp815Kbに対し強い細胞傷害活性を示し、同時にIFN-gを産生した。p815 Kb接種時にaKb TCR感染CD8陽性細胞を同時に接種することにより腫瘍の拒絶を認め、レトロウイルスベクター系によるTCR遺伝子導入で、生体内でも機能的な抗腫瘍細胞傷害性T細胞を作製できることが確認された。 次にマウス皮下に形成されたp815腫瘍に浸潤したT細胞のTCRの回収を試みた。p815腫瘍に浸潤しているCD8陽性細胞ではVβ10陽性細胞が優位に増加しており、腫瘍浸潤T細胞からCD8陽性Vβ10陽性細胞をシングルセルソーティングを行いcDNAを合成し、PCRを用いてTCRα鎖及びβ鎖を回収した。回収したTCRプールから、SSCP法で腫瘍内への集積を確認出来たクローンと同一の配列のTCRb鎖を使用するTCRを選択した。選択したTCRをDBA2マウスCD8陽性細胞に感染させると、感染細胞はp815腫瘍に対し優位な細胞傷害活性を示した.感染細胞は腫瘍保持マウスへの移入により腫瘍への集積を確認した。よって腫瘍浸潤Tリンパ球からSSCP法を用いてTCRを回収し、レトロウイルスベクター系を用いてCD8陽性細胞に導入することにより生体内でも腫瘍特異性を示す、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞を作製できることが確認された。
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