平成14年度は特にペルシア語史料アフザル・アル・ダヴァリークの読解と分析に集中的に取り組んだ。同作品は唯一の写本が英国ケンブリッジ大学の図書館で近年発見されたばかりであり、17世紀のペルシア語かつ数名の写字生によって筆写され各々筆跡が異なるなど、その読解は困難を極めたが、1年をかけて全体を通読して必要な情報をおおむね抽出することに成功した。このうち、写本にみえる「ゴラーム」集団形成に関しては日本中末学会年次大学(平成14年5月於東京大学)において、また、シャー・アッバース1世の対コーカサス改集とゴラーム・リクルートの問題に関しては日本オリエント学会(平成14年10月於東北大学)に参加し口頭発表を行った。また、10月にはゴラーム・エリートの故地グルジアにおいて、史料調査を実施し、関連する研究文献を入手することができた。研究成果をまとめた論文の執筆は英文・和文ともに最終段階であり、ほぼ終えている。研究二年目の終わりとしては、当初予定していたイラン以外の地域におけるゴラームエリートとの比較研究が一部の成果をあげるに止まった点、及び成果の公表が遅れがちであった点を反省している。今後の評価を通じて、こうした反省点に立脚して鋭意比較研究を進めることで、大きな成果をあげてきたいと考えている。
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