収束運動に伴うプレート間の力学的相互作用はプレート境界面での変位の食い違い運動で合理的に表現される。これまでの研究では変位の食い違いが生じる断層面の形状を固定して考えていたが、実際の断層は地質学的時間を経て変形するはずである。本研究では、断層面が自身のすべりや外部荷重の変化に伴いどのような形状変化及び分岐を生じるのか、そしてその結果、大陸衝突帯の大地形がどのように形成されるのかを明らかにする。 今年度は昨年度の成果を土台として研究を開始し、分岐断層が主断層から分岐する点が時間とともに移動する効果をより現実的に考慮した数値計算を行った結果、昨年度に得られた成果が定性的には変わらないことをより確かな物とし、定量的な面ではこれを改良することができた。次に、媒質の破壊を伴う断層の形状進化を理解するために、プレート境界面浅部が定常的にすべり遅れた場合に定常的に蓄積する広域内部応力場を計算した。その結果、多くの大陸衝突帯に普遍的に見られる分岐断層群のパターンと調和的な応力蓄積速度場の計算結果を得た。 さらに、ヒマラヤを含む一般的な大陸衝突型造山帯の地形形成過程の解明を一層進めるために、最も活発な大陸衝突帯の一つである台湾島の形成過程を粘土モデルを用いて研究した。このモデルにおいては特にプレート境界断層系の発達を合理的に取り入れることを重要な要素として取り扱った。その結果、地球物理学、測地学、地質学、地形学の諸観測量を合理的に説明する台湾島形成のシナリオを作り上げることに成功した。この成果を地球惑星科学関連合同大会、および西太平洋地球物理会議(Western Pacific Geophysics Meeting)で発表した。この成果を論文にとりまとめて国際誌に投稿する。
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