1.日本沿岸各地で採集された海洋無脊椎動物の抽出物、計2608検体について、ガン転移に深く関与していると考えられるカテプシンB、MT1-MMPおよびMMP2に対する阻害アッセイを行った。その結果それぞれの酵素に対して約8%のサンプルが阻害活性を示した。その中から、特に活性が強く、酵素間の選択性に優れたサンプルについてその活性本体の解明を試みた。 2.MT1-MMP阻害活性が認められた、高知県二並島産海綿Chribrochalina sp.の抽出物を、各種クロマトグラフィーで順次精製したところ、2つの阻害物質を単離した。阻害物質のスペクトルデータは、既知物質haplosamate Aと完全に一致したが、報告されたデータにいくつかの疑問点を認めたので、詳細な構造解析を行った。その結果、本物質の構造をリン酸化ステロールと改定した。なお、本物質はMT1-MMPをIC_<50>値150-180μg/mLで阻害した。 3.和歌山県五ヶ所湾産のPolyclinidae科ホヤの脂溶性抽出物に顕著なMMP2阻害活性が認められた。凍結資料を抽出後、各種クロマトグラフィーにより精製し、活性成分として1-(12-hydroxy)octadecanyl sulfateを単離した。その構造は各種スペクトルデータから、C_<18>の硫酸化アルコールと決定した。本物質はMMP2をIC_<50>値9.0μg/mLで阻害した。 4.高知県箱島産海綿、Callyspongia truncataからは、MT1-MMP阻害物質として、既知物質であるhalistanol sulfateとともに、新規化合物であるcallysponginol sulfate Aを得た。本物質の構造は、分光学および化学的な解析からC_<24>の硫酸化された不飽和脂肪酸であることが明らかになった。本阻害剤はMI1-分光学MMPをIC_<50>値15.0μg/mLで阻害した。
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