研究課題
ポロメーターを用いた暗黒物質の探索実験を神岡地下実験施設で行っているが、今年度は吸収体にフッ化ナトリウムを採用し測定を行った。これまでのフッ化リチウムによる測定とほぼ同じバックグラウンドスペクトルが得られ、結晶自体の放射性不純物はすでに非常に少なくなっていることが確認できたと同時に、結晶に取り付けたサーミスターに多くの放射性不純物が含まれる可能性が判明した。今回の測定により暗黒物質ニュートラリーノと陽子・中性子とのスピンに依存した結合の強さに対する制限をつけることができた。この結果はこれまでにスピンに依存した相互作用をするニュートラリーノ探索で最も強い制限をつけているNaIを用いたUKグループの結果を一部排除するものである。これは本実験でスピンの性質に特徴をもつフッ素をポロメーターによりターゲットにすることができたためである。一方、より確実な暗黒物質のシグナルである『暗黒物質の風』を捕らえるための方向感度を持った検出器の開発を行っているが、今年度はスチルベン単結晶シンチレーターの入射粒子の方向による発光量の違いを詳細に測定した。測定には東京工業大学原子炉工学研究所のタンデムペレトロン加速器を使用した。加速器から得られる比較的低速な中性子を結晶に入射し、実際に暗黒物質に感度を持つと考えられる炭素の反跳方向と発光量の関係を調べた。その結果、低エネルギー領域(30keV)まで角度依存性が保たれていることが確認でき、その角度による違いは最大で7%ほどであることが分かった。この測定によりスチルベン単結晶の暗黒物質に対する較正ができたので、暗黒物質探索に必要な物質量・測定時間の見積もりを行い、検出器の設計・製作を開始した。特に結晶は2インチサイズの大きなものをウクライナのクロスベーター社に製作を依頼、光電子増倍管に関しては放射性不純物が非常に少ないものを浜松ホトニクスに製作を依頼した。
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