1.本年度は下記のフィールドワークの他、日本にいる間は文献調査、発表、論文執筆などを行った。 2.本年度は計7ヵ月半、ウズベキスタンのフェルガナ州のリシタン市を中心にフィールドワークを行った。その成果の特徴は以下の点である。 (1)イスラーム信仰実践とジェンダー規範の関係:当該地でソ連時代のイスラーム弾圧や現在も続く政教分離政策にも関わらず、人々の暮らしにイスラーム信仰実践が深く根付いている現状を説明するために、ジェンダー規範を通じた視座は有効のようである。すなわち政治や経済、教育といった社会の諸システムから排除されたイスラームであるが、ジェンダー規範という領域において力を保ち続けてきたと考えられる。フィールドワークでこの仮説およびそれを裏付けるデータを蓄積しつつある。 (2)イスラーム信仰実践と諸儀礼:ソ連崩壊後に「民族の伝統」として「復興」しつつある当該地の諸儀礼。それらとイスラームとの関係を、主要なイデオロギーがどう説明しているか、また人々がどう意識しているか、共通点とズレを調べた。そこからは「民族の伝統」やイスラーム実践と権威の正当性をめぐる諸アクター間の攻防が浮かび上がってくる。またそれら諸儀礼を行うためには知人や親族のネットワークが不可欠であり、そこから当該地の社会生活の重要な一側面が窺えることも明らかとなった。 (3)イスラーム信仰実践とモノや空間との関係:信仰実践に欠かせないモノ(聖典、マット等)や重要な場所(聖廟、モスク、墓等)の扱われ方や人々の生活との関わりを通じて、当該地のイスラーム信仰実践のあり方をより具体的に理解、説明していく作業を進めている。 3.来年度はさらに上記調査地を中心にフィールドワークを重ね、年度の後半からは成果をまとめて発表していく予定である。
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