研究概要 |
申請者は、これまでに骨格形成不全、病的骨折、乳歯や永久歯の早期脱落を特徴とする低アルカリホスファターゼ症の細胞分子生物学的メカニズム解明のため、従来報告されていた本酵素の遺伝子の突然変異に着目し、この変異が酵素活性の消失と細胞内輸送の異常をもたらすことにより、低アルカリホスファターゼ症が生じることを明らかにしてきた。次の段階として、最近新たに見い出された組織非特異型アルカリホスファターゼの別の変異について、それを引き起こすメカニズムの解明を目的とし実験を行った。今回、低アルカリホスファターゼ症で報告された組織非特異型アルカリホスファターゼの複合ヘテロ接合体(F310L,V365I)症例について解析を行った。野生型および変異型組織非特異型アルカリホスファターゼ遺伝子をCOS細胞に導入し、各々の細胞内局在について共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析を行ったところ、いずれも細胞膜表面に発現していることが判った。さらに、P-nitrophenyl phosphateを基質としたassayによりアルカリホスファターゼ活性について検討したところ、野生型の酵素活性を100%とすると、F310Lは67%、V365Iは31%であった。アゾ色素法にて、形態的およびSDS-PAGEにて解析した結果、P-nitrophenyl phosphateを基質としたassayの結果に一致していた。以上の結果から、複合ヘテロ接合体(F310L,V365I)症例は、細胞内輸送に異常をきたさず、酵素活性が低下することにより、臨床的に重篤な低アルカリホスファターゼ症を引き起こすことが判明した。
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