• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2003 年度 実績報告書

ササの一斉開花・枯死を契機とした森林動態の解明

研究課題

研究課題/領域番号 01J07155
研究機関新潟大学

研究代表者

阿部 みどり  新潟大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC1)

キーワード更新戦略 / 更新ニッチ / ササ / ブナ / 実生 / ブナ-チシマザサ群落 / 林冠ギャップ / 野ネズミ
研究概要

秋田県のブナ天然林において、以下のフィールド調査を行った。
ブナ実生バンク形成のための必要条件を明らかにするために、ブナの種子落下量、実生の動態、および小哺乳類の個体群密度を調査した。その結果、ササが1996年に枯死した閉鎖林冠下のサイトでは捕食害により死亡する実生の割合が低く、もっとも生存率が高かった。種子の落下量が多かった1997年や2000年と比較して、実生発生前年の種子落下密度は低かった。しかし、第一成長期後の実生の生存率は1998年や2000年よりも高かった。したがって、ブナの実生の生存率は、種子落下量よりも、野ネズミの個体群密度により変動すると考えられた。豊作による大量結実がなくても、野ネズミの個体群密度が低い年にはブナの実生の生存率が高く、同齢集団が形成されることがわかった。しかし、豊作年と比較すると秋の定着実生密度は低かった。今後は、種子落下量と野ネズミの個体群密度の組み合わせにより変動するブナの生存率と個体数の変動が、実生バンク形成メカニズムに果たす役割について明らかにする必要がある。そのためには、今後も継続してブナと野ネズミのデモグラフィーを調査する必要がある。
ササ一斉枯死による空間的な捕食回避効果は、当年でも確認された。しかし、この効果はササ一斉枯死後、経過年とともに変化した。その理由は、ササの枯死および回復過程が群落単位で不均一なためである。ササの回復は林冠の状態により不均一であるが、それとともに、一斉枯死時に生残していた非開花個体の衰弱が著しいためである。従って、現在のように林冠とササの状態を組み合わせた4区分の調査のみでは、今後のブナの実生バンク再生過程を把握することが困難であると考えられた。従って、現在の調査に加え、群落全体の不均一性をカバーできる調査デザインを検討する必要がある。
以上のことから、ササ型林床を持つブナ林は、今まで考えられてきたような単純な系でないことが明らかになってきた。再生過程は非常に不均一であり、この不均一性をもたらす要因には生物的な要因が関与しているため、常に動的である。したがって、今後の再生過程についても、あらゆる側面からとらえ、再構築する必要がある。

  • 研究成果

    (2件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (2件)

  • [文献書誌] Abe, M.: "The effect of simultaneous death of dwarf bamboo (Sasa kurilensis) and canopy gap formation on the growth of beech (Fagus crenata) seedlings."Bull.Facul.Agric., Niigata Univ.. 155(No.2). 197-204 (2003)

  • [文献書誌] Abe, M., Miguchi, H., Honda, A., Makita, A., Nakashizuka, T.: "Short-term change in factors affecting beech regeneration after simultaneous death of dwarf bamboo."Journal of Vegetation Science. (採録決定).

URL: 

公開日: 2005-04-18   更新日: 2016-04-21  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi