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2003 年度 実績報告書

検閲回避の韻律と象徴:現代イラン文学の特質の形成

研究課題

研究課題/領域番号 01J07381
研究機関東京外国語大学

研究代表者

前田 君江  東京外国語大学, 外国語学部, 日本学術振興会特別研究員PD

キーワードペルシア / ペルシア語 / ペルシア文学 / ペルシア詩 / イラン / イラン文学 / イラン詩 / 詩
研究概要

1.昨年度に引き続き、イランの現代詩人シャームルーAhmad Shamlu(1925-2000)に関する研究を行った。今年度は、シャームルーの政治的思想と作品との関わりから、さらに進んで、彼が1950-60年代におけるイラン詩の状況の中でうち立てた、独自のジャンルと詩論についての研究を行った。
2.シャームルーは、イラン詩において初めて、she'r-e mansur「非韻律詩」のジャンルを確立した詩人である。本研究では、歴史的にshe'r-e mansur(「散文の詩」)と呼ばれてきた作品を分析することによって、ペルシア詩におけるshe'r-e mansur概念の再考を試みた。これによれば、ペルシア語のshe'r-e mansurは、従来、prose poetryと訳されてきたが、形態的には、文学研究一般で言われるところの「散文詩」ではなく、avant garde free verse(「完全自由詩」)と呼ばれるものに近い形であることが明らかになった。しかし、同時に、she'r-e mansurが、「詩」において必要不可欠であるとされてきた「韻律」を排除したために、「散文」であるとみなされ、かつ、she'r-e mansur自体もまた、韻律の存在に関わりなく、詩が「詩たらしめるもの」を追求するという点で、「散文詩」と同様の文学史的課題を背負ってきたことを明らかにした。
3.韻律形式は、現代においてもなお、ペルシア文学において、絶対的な価値をもつものであり、これを侵すことの意味もまた重大であった。シャームルーが、詩から韻律を排除するに際して、うち立てた概念のひとつが、「純粋詩」である。本研究担当者は、シャームルーの「純粋詩」の思想を、ペルシア詩において、新しい「詩」概念の形成として捉え、これを分析した。これによれば、第一に、シャームルー詩作論においては、「それ自体の形態をもった詩が、おのずから生まれてくる」という、彼の個人的な感覚が、非韻律詩創出の契機となっていることが指摘できる。また、第二に、シャームルーの主張する無意識性が、たとえば、「自動記述」において見られるような、無意識の利用ではなく、外界における体験が詩人の感覚を支配する力の強さを確信している点で、特徴的であることが明らかになる。
4,さらに、シャームルーが事実上、詩作のうえでの師として位置づけたニーマー・ユーシージNima Yushij(1897-1960)の詩論の分析を通し、両者の詩学上の対立点が、詩における韻律リズムの存在に関するものだけでなく、詩と詩のフォルムとの関係をめぐるものであった点を明らかにした。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (1件)

  • [文献書誌] 岡田恵美子(偏), 前田君江(共著): "『イランのための60章』うち、「俳句との邂逅-現代イラン詩抄」"明石書店(予定). 320 (2004)

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公開日: 2005-04-18   更新日: 2016-04-21  

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