Cu-Al-Mn系超弾性合金の高性能化とその医療および電子機器材料への応用

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01J08047
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 須藤 祐司 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特別研究員(PD)
• キーワード: Cu-Al-Mn / マルテンサイト変態 / 超弾性特性 / 結晶粒径制御 / 集合組織制御 / 現象論解析 / 形状記憶合金

研究概要

本研究では、優れた超弾性特性が得られるβ相結晶サイズおよび集合組織を形成するための加工熱処理法を検討した結果、以下のような知見が得られた。
1 β相結晶粒径制御
超弾性歪み量は、箔および板材試料では粒径(d)/板厚(t)に、線材試料では粒径(d)/線径(D)に大きく依存し、d/tおよびd/Dが大きい試料ほど大きな超弾性歪み量(7%以上)が得られる。しかしながら、d/tおよびd/Dが非常に大きくなると、結晶粒構造がバンブー構造になってしまうため、例えば、試料を曲げた時、ある粒が優先的に曲がってしまい試料が折れ曲がった状態になってしまう。これは、応力誘起マルテンサイト変態応力が方位に大きく依存するためであると考えられる。このような折れ曲がり現象を解消するため、d/t<2およびd/D<1に制御する必要がある。
2 集合組織制御および現象論による超弾性歪み量の方位依存性解析
Cu-Al-Mn bccβ相合金では、圧延および再結晶により{121}<110>集合組織が形成されることが今までの研究により分かった。本研究において、強烈な集合組織を形成させるための加工熱処理法を検討した結果、fcc構造を有するα相およびβ相の2相状態において、加工を加え、その後再結晶する事により、強烈な{121}<110>集合組織が形成される事が分かった。さらに、Niの添加がα相を制御するために有効な元素である事が分かった。また現象論解析により、Cu-Al-Mn単結晶では、<100>にて10%、<110>にて7.4%、<111>にて2.1%の超弾性歪みが得られる事が予測された。また、{121}<110>集合組織をもつ板材の超弾性歪み量の引張方向依存性は、現象論解析による依存性傾向と良く一致した。従って、単結晶の現象論解析から多結晶集合組織材の超弾性歪み量の引張方向依存性を予測できることが分かった。

研究成果

• [文献書誌] Y.Sutou, T.Omori, R.Kainuma, N.Ono, K.Ishida: "Enhancement of Superelasticity in Cu-Al-Mn-N : Shape Memory Alloys by Texture Control"Metallugical and Materials Transactions A. 33A. 2817-2824 (2002)
• [文献書誌] T.Omori, J.J.Wang, Y.Sutou, R.Kainuma, K.Ishida: "Two-Way Shape Memory Effect Induced by Bending Deformation in Ductile Cu-Al-Mn Alloys"Materials Transactions. 43. 1676-1683 (2002)
• [文献書誌] R.Kainuma, J.J.Wang, T.Omori, Y.Sutou, K.Ishida: "Invar-type effect induced by cold-rolling deformation in shape memory alloys"Applied Physics Letters. 80. 4348-4350 (2002)