ラットの口蓋に人工的に創傷をつくることで発現誘導がみられることから、創傷治癒過程で重要な役割を担っていると考えられるASK1の活性制御メカニズムを探る目的で実験を行った。前年度、ASK1の活性化因子を見つけるためにYeast Two-hybrid Screeningを行い、Fas-activated Serine/Threonine Kinase(FastK)がHEK293細胞内での過剰発現系においてASK1と強固に結合し、またASK1の活性化に必須であるキナーゼドメイン内のThr845のリン酸化上昇を引き起こす新規の分子であることを見いだした。その為、今年度はFastKによるASK1の活性化メカニズム、ならびにその生理的意義について解析した。 FastKは当初、Fasによるアポトーシスに関わるセリン/スレオニンキナーゼとして報告された分子であるため、まず、FastKがキナーゼとして直接ASK1をリン酸化して活性化する可能性について検討した。その結果、キナーゼとしての構造を保持できない変異型FastKとの共発現によってもASK1のリン酸化レベルが上昇すること、またin vitro kinase assayによってFastKのキナーゼ活性が検出できなかったことから、FastKはキナーゼとして直接ASK1をリン酸化して活性化するのではなく、間接的にASK1のリン酸化を誘導することでASK1を活性化することがわかった。また、FastKの過剰発現によりASK1の下流分子であるJNKおよびp38の活性化が認められ、さらにCaspase-3の活性化を伴う細胞死が誘導された。以上の結果から、FastKは、ASK1の活性化を介して新たなMAPキナーゼ系の制御因子として機能し、アポトーシスの制御にも関わる分子であることが示唆された。
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