| 研究概要 |
ショウジョウバエの生殖細胞は,初期胚の後極に形成される極細胞とよばれる細胞に由来する.極細胞は胚内を移動した後生殖巣に取り込まれ,vasa遺伝子などの生殖系列特異的遺伝子を発現し,生殖系列としてのアイデンティティを確立すると考えられている.私はこの時期の生殖巣のトランスクリプトーム情報を得ることが,生殖系列の決定機構を解明する上で有効な手段と考えており,本年度は以下の実験を行った.
1.胚生殖巣のEST解析
□極細胞でのみGFPを発現するショウジョウバエ胚をホモジナイズし,GFP蛍光を指標にしてFACSにより生殖巣を単離した.この生殖巣からcDNAライブラリーを作成しEST解析を行った.5'-ESTが12,563,3'-ESTが7,354,計20,227ESTが得られた.クラスタリングの結果このESTには2,743個の既知遺伝子が含まれていることが分った.さらに,200以上の未知の遺伝子が含まれていた.
□ショウジョウバエにおいてはすでに26万のESTが報告されている.これらと胚生殖巣ライブラリESTを統計学的に比較することにより,胚生殖巣特異的な遺伝子をリストアップした.これらの遺伝子は生殖系列の決定に関わっている可能性が高い.
2.胚生殖巣の網羅的in situハイブリダイゼーション
□上記(1)の解析で見いだされた胚生殖巣で発現する3,000余の遺伝子全てについて,in situハイブリダイゼーションを行っている.現時点で1,500遺伝子について解析を行い,胚生殖巣特異的に発現する遺伝子を11種類同定した.さらに,胚生殖巣と他の組織で選択的に発現する遺伝子を30種類同定した.これらの遺伝子のほとんどは今まで胚生殖巣で発現することが知られていなかった新規の遺伝子であった.
3.胚生殖巣のマイクロアレイ解析
□胚生殖巣mRNAと,同時期の発生段階の胚全体から得られたmRNAとを用いて,マイクロアレイで発現プロファイルの比較を行っている.
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