微小ジョセフソン接合1次元列は、ジョセフソン結合エネルギーE_Jと帯電エネルギーE_Cの比を変えることで量子相転移を示す。われわれは、1次元列中に生じる位相欠陥がE_J/E_Cの変化の実時間速度にどのように依存するかを調べるために次のように研究を進展させた。サンプルは、リン青銅基板上の超伝導体の細線ブリッジを、低温で基板を湾曲させて切断することによって作る。これはゼロ磁場中でE_J/E_Cを大きく変化させるためである。そのために希釈冷凍機を改造し、ヘリウムガス(低温部では液体)の圧力によってベローズを伸縮させる機構を組み込んだ。また、CuNi管にCuMn線を通し炭素微粒子を充填したローパスフィルタを開発し、測定対象の極近傍で測定用配線をフィルタリングした。この改造した冷凍機によって、70mKにおいて金属接合を自在にかつ精密に破断・接触させることに成功した。この測定システムによって、ジョセフソン接合1次元列のE_J/E_Cをin situで変化させることや、また測定用スイッチとしての応用が可能になった。 また微小ジョセフソン接合を使った高感度ノイズ検出器の研究の過程で、低インピーダンス環境中の微小接合の電流電圧特性について詳しく調べた。そのような領域の接合はどのように量子性から古典性へ移り変わるかという観点から重要である。われわれは、E_Jおよびシャント抵抗値を変えて測定を行い、量子揺らぎおよび散逸の影響を考慮した理論との比較を行った。この結果については、日本物理学会第59回年次大会(2004年3月27日)において発表する。また昨年度までに、幅の異なるジョセフソン接合配列を用いた実験において、2次元から1次元への次元の減少による超伝導・絶縁体クロスオーバーを見出したが、これを配列のキャパシタンスマトリックスのシミュレーション結果などとともに論文にまとめ、Physical Review B誌に投稿した。
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