研究概要 |
本研究は、造血幹細胞における未分化性維持や自己複製の分子機構解明の糸口として幹細胞群に共通する性質である色素排出機構に着目し、その責任分子の同定を目的として行ったものである。 昨年度は、骨髄SP細胞(Hoechst33342色素を積極的に排出する造血幹細胞群)より全長型cDNA発現ライブラリーを作製し、遺伝子の機能的スクリーニングを行なった。その結果、造血幹細胞における色素排出機構の責任分子として、薬剤トランスポーター分子として報告されているBcrp1/ABCG2/MXR遺伝子を同定した。このBcrp1遺伝子は、ウズラ繊維芽細胞の細胞株等に強制発現させることによりHoechst33342色素を排出することから、造血幹細胞の色素排出機構を規定する分子の1つであることが示された。また、Bcrp1遺伝子の発現は、マウス・ヒトの造血幹細胞および骨髄SP細胞に特異的あることを確認した。(これらの研究成果については、同時期にBcrp1遺伝子がSP細胞に発現していることを突き止めた、Brian Sorrentino (St. Jude Children's Research Hospital)のグループとの共同研究でNature Medicine (2001,7(9);1028-1034)に報告した。) 本年度は、Bcrp1遺伝子をヒトCD34陽性造血前駆細胞に強制発現させることによりHoechst33342色素を排出すること、また、造血幹細胞、赤芽球系細胞および巨核球系細胞の増殖に影響を及すことを明らかにした。(これらの研究成果については、投稿準備中である。)
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