メスに偏った性比を説明する要因に、同じ母親の息子のあいだでのメスをめぐる競争つまり局所的配偶競争(LMC)がある。本研究では、個々のメスの産卵数やその性比を調べることでLMC理論を検証するとともに、性比調節能力の生理的または遺伝的制約を含めたイチジクコバチの性比決定要因を解析し、その性比の適応的意義や進化過程を考察することを試みている。 イチジクコバチの性比調節能力や他個体を認識する能力を明らかにするため、昨年に引き続きコバルト60を照射し不妊化させたメスを利用する実験を、導入条件を変えて行った。コバルト60を照射したメスは、産卵することはできるが、その子は発生できない。コバルト60を照射したメスと照射しない1匹のメスを、順序を変えて同じ花のうに導入することで、特定のメスの産む卵の数とその性比がどのようになっているかを明らかにすることができ、メスを2匹導入する際の時間間隔を変えることで、前(後)に入った他個体の産む卵の数や性比に対し、どのような産卵パターンの変化を示すかを調べることができた。その結果、各メスは他個体の存在を認識し、産卵数のバラツキに応じて性比を変えているが、その性比にかかる選択の強さは産卵順序と産卵間隔により異なることが示唆された。 また、韓国で行われた国際生態学会(INTECOL)においてその内容を報告、それにともない出版された論文集に論文を発表した。
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