本年度は数理モデルを用いた解析と、昨年度のサンプリングでの不足データの収集を中心に研究活動を行った。数理モデルを用いた研究は前年度に引き続き静岡大・工の吉村教授との共同研究で、季節的性比調節の解析的モデルに様々なパラメーターを投入しての検討を行った。その結果、ある特定の条件では性比を季節的に変化させる形質が適応的であることを示唆する傾向が現れることがわかった。野外での調査は静岡県の野外集団を中心にツチガエルの繁殖に参加している成体の採集を行い、親による性比調節が配偶子の放出前の時点で起きているかどうかを探るためのサンプルを採集した。また、今まで十分に検討されてこなかった、XY集団での分子マーカーと表現型の性との食い違いがあるかどうかについての解明に共同研究者の広島大の三浦講師の協力で取り組み、表現型の判明している個体のDNAを調べた。その結果、全ての検体で遺伝子のタイプと表現型が一致し、本方法の妥当性を証明することができた。 また本年度は最終年度でもあり成果発表を積極的に行った。8月には日本進化学会の大会でのシンポジウムで口演し、また同月に韓国ソウルで開かれた国際生態学会議にも参加し、シンポジウムでこれまでの成果をまとめて発表し、内外の研究者から多くの意見を頂くことができた。3月には所属する大学院の21世紀COEプログラムでの第一回若手研究者4領域統合発表会で所属研究室を代表して発表し、分子生物学と生態学、数理生物学の多領域にまたがる研究の一例としてこれまでの内容を紹介し、普段は比較的交流の少ない分子系の研究者と多くの意見を交わすことができ、貴重な意見を数多く得ることができた。論文発表の面では、数理モデルの基本的な部分を含めた本研究の総合的な内容が国際生態学会議のプロシーディングに掲載された。これとは別に今年度新たに得られた内容を元に、実験面での論文をまとめているところである。
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