概日リズムは生物界に普遍的に存在する生体リズムであり、生命活動の基底をなす重要な役割を果たしている。こうしたリズムの伝達を行う因子としてペプチドホルモンが関与していると考えられており、本年度は新規ペプチド性ペースメーカー候補の遺伝子単離を中心に次の実験を行った。 1.新規概日リズム関連ペプチドのcDNAクローニング 本研究ではFMRFアミド様ペプチドを新規の概日リズムペースメーカーホルモンペプチドの候補として取り上げている。今年度、このペプチドの遺伝子単離に成功した。当初脳からの遺伝子単離を試みたが成功せず、組織を胸部の神経節に変更し、イエバエおよびクロキンバエのFMRFアミド様ペプチドの遺伝子単離を達成した。この遺伝子はFMRFアミド様ペプチドに特徴的な4アミノ酸からなる配列(Phe-Met-Ark-Phe(アミノ酸一文字表記))を含むペプチドをイエバエでは18個、クロキンバエでは16個コードしており、ハエの仲間でもそのペプチドのアミノ酸配列や存在数に違いがあることが明らかとなった。解析した配列情報をもとに、クロキンバエ脳におけるin situハイブリダイゼーションを行った。その結果、脳内に約50個の細胞が検出された。また、単離したFMRFアミド様ペプチドと受容体の生理活性を見るために、配列を解明したペプチドを実際に化学合成し、ハマグリ心筋を用いた生理活性を測定したところ、実際に筋収縮増強活性があることが確認された。 2.FMRFアミド様ペプチド受容体のcDNAクローニング ショウジョウバエのFMRFアミド様ペプチド受容体の配列情報をもとに、イエバエおよびクロキンバエのFMRFアミド様ペプチド受容体の遺伝子単離に成功した。これらのアミノ酸配列は非常に相同性が高く、複数のFMRFアミド様ペプチドが存在する中でも配列が特によく似たものが結合すると考えられた。
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