研究課題
スルメイカは、日本における食糧供給の中でも重要な水産生物の一種であり、現在のTAC(漁獲可能量)制度の選定魚種である.このような背景から、スルメイカ分布、あるいは回遊生態に関する様々な研究が行われてきた.しかしながら、観測船による結果によるため、分布回遊経路は断片的な把握にとどまっていることが問題点としてあげられる.そこで本研究では、スルメイカの分布、回遊を把握するために、漁獲の際に使用する漁り火の光を捉えている夜間可視衛星画像データを使用することを考えた.本年は以下の2項目について行った.1.夜間可視衛星画像によって捉えられた漁船分布の季節変動を用いた教師あり分類の結果、日本海を7海域に区分できた.区分された海域の季節変動から、北上回遊パターンと南下回遊パターンの2つに大別することができた.また、不漁年である1998年は、漁場が通常より沖合に形成され、豊漁年である1996年は、ウルルン島周辺海域に好漁場が形成されていたことが明らかとなった.2.北海道道南海域におけるスルメイカ漁場形成は、近隣第3種漁港との距離に関係しており、漁港から約28kmまでの距離圏に形成されていることが明らかとなり、その分布に季節変動が認められた.漁場は、6〜8月には日本海側、9月〜11月には太平洋側に、12月は津軽海峡に形成されることが明らかとなった.また、漁港を利用しているスルメイカ漁船の隻数と夜間可視衛星画像の画素数との関係を調べた結果、両者に有意な正の相関が認められた.これは、夜間可視衛星画像から沿岸域におけるスルメイカ漁船数の推定可能性を示すものである.
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