本年度は、以下の2項目について行った. 1.スルメイカ漁業の環境影響評価手法の開発 スルメイカ漁業は、夜間に集魚灯を使用する漁法である.この集魚灯には、光量規制が行われているが、発電のための使用重油量や排出二酸化炭素量について明らかとなっていない.そこで、スルメイカ漁業が周辺環境に与える影響を評価する第一段階として、夜間可視衛星画像と現場レーダー観測から、北海道南西海域におけるスルメイカ漁業の使用重油量と排出二酸化炭素量の算出を行った.その結果、2003年7月23日の北海道南西海域には、約315隻のスルメイカ漁船が漁業活動を行っており、使用重油量は、約189.000リットル、排出二酸化炭素量は、約509.9トンであった.また、同様の方法を用いて、7月の北海道南西海域における排出二酸化炭素量を算出した結果、約21400トンであった.これは、2001年度二酸化炭素量運輸部門の約0.03%を占めており、スルメイカ漁船が排出する二酸化炭素量は決して少なくない結果を示した.今後、スルメイカ資源の持続的利用と周辺環境への影響を考慮に入れた漁業開発が必要である. 2.海色衛星データに基づく日本海におけるクロロフィルa分布の時空間特性 日本海におけるスルメイカ漁場の予測を行う第一段階として、生態系の底辺に位置する植物プランクトンに含まれるクロロフィルa分布の時空間特性を海色衛星Orbview2/SeaWiFSデータを用いて調査した.従来、植物プランクトンの動態を明らかにする方法として、生態系モデルと海流モデルとを組み合わせて研究が行われてきた.しかしながら、それらは決定論的な方法であることから、モデル結果の解釈には慎重な議論が必要不可欠である.そこで、本研究では、それらの方法論とは異なる時系列解析を応用した時空間統計モデルを開発し、適用した.時空間統計モデルは、時点t毎に任意の空間上の点の変動が真北より45度毎の異なる4つの方位毎の線形結合によって表現されるものとみなしてモデルを定義した.その結果、春季ブルームのような変化の激しい時期の再現が難しいことが示唆された.逆に、変化の顕著でない時期の再現は概ね成功し、今後、春季ブルーム期の再現を可能にするモデルの開発が課題として残った.
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