本年度の研究目標の一つであった筋衛星細胞を効率良く分画する方法については、マウス骨格筋から酵素処理により調製した単一筋線維を直接培養することにより、極めて純度の高い筋衛星細胞を得ることに成功した。この単一筋線維を直接培養する方法は、従来から行われているマウス骨格筋を機械的に細かく処理した後、トリプシンやコラゲナーゼなどの酵素処理することにより得られた細胞を培養する方法と比較すると、得られる細胞数は少ないものの、線維芽細胞あるいは内皮細胞といった筋細胞以外の細胞の混入がほとんどないことが長所としてあげられる。得られた単核細胞に分化誘導をかけると多核の筋管を形成することからも、本法で調製した細胞は正常に分化能力を有することも確認できた。この単一筋線維を直接培養する方法は筋衛星細胞を利用する実験を行う上で極めて有用な調製方法であることがわかった。また二番目の目標はRNAi法を用いてネブリンをノックダウンさせた筋衛星細胞を作り出しその細胞を解析することであったが、残念ながら現在までにノックダウンさせた筋衛星細胞を得るには至っていない。実験が成功しなかった理由として、(1)ネブリンは分子量が800kDaと巨大なタンパク質であるので効果的にノックダウンさせるためのRNAを設計するのが困難であること、および(2)RNAを細胞に導入する際の効率の低さなどが考えられる。今後は(1)に関しては再度RNAの設計をし直すこと、(2)に関してはトランスフェクションの方法を変える、あるいはdouble strands RNAを直接作り出すplasmidを筋細胞にトランスフェクションする方法に切り替えること等について検討し、問題点を克服していきたいと考えている。
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