骨格筋細胞にRNAi法を用いてネブリンをノックダウンさせること、さらにその骨格筋細胞のサルコメア構造および細いフィラメントの長さを解析することはできなかった。しかし、昨年度の結果よりマウス骨格筋から骨格筋組織幹細胞である筋衛星細胞を効率良く調製する方法を確立した。従来までは筋衛星細胞だけが骨格筋細胞に分化できる唯一の細胞と考えられていたが、最近になって筋衛星細胞以外からも骨格筋細胞に分化可能な細胞の存在が示唆されている。そこで筋衛星細胞以外の細胞がどのようにして骨格筋細胞への分化するのかを明らかにするために、骨髄細胞の一種であるside population (SP)細胞に着目し、in vitroにおいて骨髄SP細胞の骨格筋細胞への分化実験を行った。骨髄SP細胞を単独で培養しても筋分化しないため、GFP transgenicマウスから骨髄SP細胞を、B6マウスから筋衛星細胞を調製し共培養を行ったところ、共培養開始3週間後にGFP陽性の筋管が観察された。これらの筋管は自己収縮能を有しデスミン陽性であった。さらに骨格筋特異的な遺伝子の発現も確認できた。in vitro系での骨髄SP細胞と筋衛星細胞の共培養により、はじめて骨髄SP細胞由来の筋管が出現すること、さらに筋衛星細胞を培養するのに用いた培養液を骨髄SP細胞の培養液として使用しても骨格筋細胞に分化しないことの2点を考慮すると、骨髄SP細胞が骨格筋細胞に分化するためには筋衛星細胞から分泌される成長因子等の液性因子よりも骨髄SP細胞と筋衛星細胞との接触刺激が重要であることが示唆された。本研究成果は、筋原線維タンパク質の筋形成過程における挙動を研究する上で有効な手段になると考えられる。
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