本年度はイヌミルクリゾチーム(Canine Milk Lysozyme : CML)のMolten Globule(MG)状態のnon-native helix構造に関する研究を行った。これまでの研究から、CMLのMG状態においてα-helixに特有な222nmの楕円率の絶対値がNative(N)状態よりも大きく、MG状態のhelix含量がN状態よりも多くなっていることが示されていた。しかしながら、どの部分がMG状態においてhelixを形成するのかは明らかにはされていなかった。本研究において、helical propensityを予測するプログラムであるAGADIRによって、N状態ではβ-sheetを形成している領域内にhelixを形成し易い領域が存在していることが見出され、その領域がMG状態においてhelixを形成している可能性が示唆された。そこで、その領域内の1残基をhelix-breakerであるプロリンに置換した変異体(Q58P)を作成することでnon-native helix構造の存在について検討を行った。その結果、変異体のMG状態における222nmの楕円率の絶対値が野生型よりも小さくなり、58番目周辺が天然状態ではβ-sheetを形成しているがMG状態においてはhelixを形成していることが示された。また、変性実験の結果より58番目周辺のhelix構造はMG状態の形成および安定性には寄与しないことが示され、58番目周辺のhelix構造は非協同的相互作用により形成されていることが示唆された。そこで、この部分に対応するペプチドモデルを作成し、この部分のMG状態のおける3次元分子構造に関する検討をNMR法を用いて行った。 研究成果については現在論文執筆中である。
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