研究概要 |
本研究ではほ、ポテンシャルエネルギーを解析関数にフィッティングする事無しに、各時間ステップで全エネルギーおよび全原子核のエネルギー勾配を計算しながら、反応軌跡を時間発展させていく方法(ダイレクト・アブイニシオ・ダイナミックス法)を開発および、それを生体内反応へ応用することを目的とし、以下の研究を報告した。 ●水和されたペプチド鎖のイオン化ダイナミックス モデルペプチド分子(trans-formanilide;FA)-水クラスターのイオン化過程のダイナミックスを理論的に研究した。中性FA(H_2O)には3つのコンプレックス(NH site, CO site,bridge site)が存在した。NH siteは、-NH-CO-ペプチド結合のHにH_2OのOが配向した構造で、H_2Oはプロトンアクセプターとして作用していた。CO site、bridge siteはともに、ペプチド結合のOにH_2OのHが配向した構造で、特にbridge siteはH_2Oが芳香環との橋渡しをしているような構造であった。本研究では、これら三つの中性FA(H_2O)の最適化構造から垂直イオン化し、その後のトラジェクトリーを比較、議論した。これらの結果から、反応のモデルを構築した。 ●アセチルコリンエステラーゼの酵素触媒メカニズム 神経伝達物質アセチルコリンが、その分解酵素アセチルコリンエステラーゼによって加水分解する反応のメカニズムについて理論的に研究し、酵素触媒メカニズム、特に反応障壁のエネルギーとオキシアニオンホールの役割について明らかにした。この加水分解反応ではオキシアニオンホールの存在が、反応経路のエネルギーが安定化し、反応の進行を助けていることが明らかになった。
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