協調的でもあり競争的でもある交渉という環境において、そのお互いの目的が協調的でかつ競争的であるシミュレーション環境のモデル化を行い、そのような環境における各エージェントの学習機構の開発とそのエージェントが学習によって獲得した内部構造の解析を行った。さらに、2エージェント間の合意形成の1つとして、ここでは、turn-takeの構造に着目した。Turn-takeの振る舞いは自分の目的を達成しながらも、相手の要求に応えて自分の目的を変化させるという交渉過程には必要な構造を含んでいる。 このモデルにおいて各エージェントに実装したリカレントニューラルネットワークを共進化させることにより、シミュレーションを行い、Turn-Takeの構造を獲得させた。各世代ごとに得られたネットワークが様々なspatio-temporal patternを生み出し、そのpatternがどのように相互に作用を及ぼし合い、Turn-Takeの構造を獲得しているかを調べるために力学系解析を行い、その結果、エージェントの持つ内部構造としてのリカレントニューラルネットワークはTurn-Takeの状況において安定な領域から不安定な領域を通って遷移することがわかり、お互いのもつ安定な構造と不安定な構造がTurn-takeの相互作用において形成されることがわかった。 また、お互いのネットワークが結合することで全体の振る舞いにおけるノイズを打ち消しあうように相互作用を行い、お互いの内部ダイナミクスが同調することによってTurn-takeの振る舞いが形成されていることを明らかにし、認知科学で言われている間主観性の1つのモデルを提案した。
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