研究概要 |
本年度は、電気化学中間体を分光学的に捕捉・検出する事を目的とした。昨年度の研究において、電気化学活性種がマイクロチャンネル中の溶液フローにより非常に高効率で電気化学捕捉することが可能である事を示した。電気化学検出は、高感度且つ汎用性が高くマイクロデバイスとして非常に有用であるが、分光や質量分析などの他の機能と組み合わせる事により定性性が増し、より選択的且つ高感度な電気化学検出や分光学的検出に応用することが可能になると考えられる。 作製したマイクロチャンネルチップは全体が1.5x3.0cmで、チャンネルの幅は100μm、深さは20μmであり、電極幅は50,250,500μmの3種類の電極を作製した。システムの動作確認としてエチルビオロゲンブロマイドの還元体(EV^<1+>)を溶液フロー条件下、電極上で生成させ顕微鏡下の吸収測定によりスペクトルの測定を行った。得られたEV^<1+>の吸収スペクトルは、古典的な白金メッシュ電極で測定された中間体のスペクトルと良い一致を示し正常にシステムが動作している事を確認した。芳香族炭化水素化合物であるペリレン分子のカチオンラジカル(Pc^<+・>)測定においては、空間分解吸収測定により不安定な化学種であるペリレン分子のカチオンラジカルとダイマーカチオンラジカルの生成消滅過程をチャンネルチップ中でin-situかつ定常的に観測する事に成功した。なお、このシステム(中間体の寿命)を利用して最終年度では電解合成反応に応用し、化学反応のダイナミクスの追跡や反応制御に応用する予定である。
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