昨年度に立ち上げた周波数変調分光器とレーザーアブレーション装置を用いて実際に含金属クラスターの分光を行った。既に昨年度までにブルックヘブン国立研究所において周波数変調レーザー過渡吸収分光法によって、チタンサファイヤリングレーザーを用いて周波数変調分光法によってC-X遷移の観測されているTisは1.3ミクロン帯にE-X遷移を持つので、最初のターゲットとしての分光を行った。 最初に830nmに既に確認されているTiSのバンドを観測し、光路長2cmほどにもかかわらず過渡吸収が測定されることを確認した。この遷移を用いてTisの生成を最適化した。目的の1.3μmでは830nm付近と比較して位相変調器の効率は減少するが、変調周波数のパワーをあげることによって、サイドバンドの効率を20%程度に保ち、感度を維持した。TisのE-X遷移はTiOからの類推によって、やはり微弱な遷移と考えられるが、アブレーションでの効率のよい生成と、高い感度により十分な強度で観測された。この遷移は以前に、フーリエ変換発光分光法により観測されているが、分解能は0.05cm^<-1>で、本研究で到達している0.01cm^<-1>より低く、またA-X遷移のホットバンドが同じ領域にかかっており妨害となっていた。今回の実験ではアブレーションを用いているため、Tisは低い電子状態にあり、このような妨害線は見られず、回転量子数の低い状態を高い分解能で吸収分光によって観測することができた。 今後は、吸収分光による観測の少ない、1ミクロン前後の領域での分光を進める予定である。
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